私はこれまで、助産師として5,000人以上の産前産後の方々と向き合ってきました。その中で感じたのは、「いのちを産む」ということは、大きな喜びとともに、さまざまなリスクをはらんでいるということです。
かつて、産科合併症のひとつである高血圧によって、お母さんと赤ちゃんの両方が命を落としてしまう出来事に遭遇をしたことがあります。妊娠・出産の時期は、たとえそれまで健康であっても、半数以上の方が何らかの産科合併症を経験すると言われています。そんな背景から、「妊娠中や産後の運動」が、産科合併症や身体の不調の予防に効果があることを知り、深く関心を持つようになりました。
しかし「妊娠中の人が運動をしたくてもできる場所がない」「妊娠中・産後の運動に精通している人が少ない」といった現実に直面しました。運動の知見をもっと深め、効果を社会に広めていく必要があると痛感し、大阪大学大学院医学系研究科 健康スポーツ科学講座に進学し「妊娠中の運動と産科合併症の関連について」研究に取り組みました。
そして、こうした思いと経験をもとに、maemo atomoを創業し、「出産をリスクにしない」社会の実現を目指しています。
手術室勤務や助産師として、帝王切開・経膣分娩の両方に携わってきました。出産は常に変化の可能性を孕み、医療現場では緊張感と責任をもって対応してきました。
産前産後には、病気とまでは言えないものの、腰痛・尿もれ・倦怠感・気分の落ち込みなど、心身の不調に悩む方が多くいます。こうした不調は「仕方がない」と見過ごされがちですが、先行研究では、適切な運動介入により症状の予防・軽減につながることが明らかになっています。
創業以来、年間約2000件の産前産後レッスンを通じて痛感したのは、助産師としての専門知識に加え、リハビリの視点を持つことで、より多角的で質の高い支援が可能になるということです。単に運動を提供するのではなく、心身の変化に寄り添いながら、個々の状態に応じた指導を行うには、幅広い理解が不可欠だと感じました。
そのため現在は大阪公立大学大学院リハビリテーション学研究科で、産前産後の骨格筋の変化と身体症状に関する研究に取り組んでいます。産前産後とリハビリの専門性を融合させながら、同じ志を持つメンバーと共に、「maemo atomo」だからこそ実現できるケアのあり方を探究しています。
経済産業省に入省後、産業技術担当の大臣官房審議官、中小企業庁経営支援部長などを歴任。医療制度改革の推進、ヘルスケア産業の立ち上げ・振興に尽力。その後、大阪大学医学系研究科特任教授として、大学発スタートアップの創出など、イノベーションの実現に取り組む。
知的財産の活用支援、事業再生など、多岐にわたる分野で実績を有す。弁護士としての活動に加え、大阪大学知的基盤総合センター特任教授として研究成果の事業化支援にも携わるほか、大阪弁護士会知的財産委員会副委員長を歴任し、学術・実務の両面で要職を務める。